世界の難民統計 2020年版

2021年6月18日、国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)Global Trends 2020を発表しました。

このレポートは毎年、6月20日である「世界難民の日」に合わせて発表されるレポートで、今回のは2020年末まで世界における強制移住(※これは国外に避難する難民だけでなく、国内避難民や庇護希望者の数字も含まれています)データをまとめた報告書になります。

今回は先日発表されたGlobal Trends 2020の要約をご紹介します。

Global Trends 2020の要約

UNHCRによると、2020年末までに世界では約8,240万人の人々が紛争や政治的迫害、自然災害などが原因で故郷を追われています。

移住を強いられている8,240万人とその内訳 ©筆者作成

これは世界の人口の1%に相当します。

8,240万人の内、半数以上の約4,800万人が自国内で避難を強いられる国内避難民で、約2,640万人が国外に避難する難民と呼ばれる人たちです。

また、約410万人が避難先に難民の認定と保護を求める庇護希望者であり、約390万人が難民のカテゴリーには当てはまらないが多くの人々が当てはまる、国内の経済状態の悪化で国外に出ているベネズエラ人となります。

難民の出身国ワースト5

次に、国外に避難をしている難民の主な出身国を見てみましょう。

難民の出身国ワースト5のグラフ ©筆者作成

この5ヵ国だけで世界の難民の出身国の68%を占めています。

ワースト1位は2011年に始まった紛争から10年が経ったシリアです。2014年からずっとワースト1位。未だに約670万人が国外に避難をしており、国内にも約620万人もの国内避難民を抱えています。

2位は南米の社会主義国ベネズエラです。国内の政情不安、それに伴う経済の崩壊で未だに多くのベネズエラ人が周辺国に避難・移住をしています。ベネズエラ人の強制移住の多くは紛争や迫害ではなく経済崩壊が原因ということで、一般的な難民の定義には当てはまりません。

なので最初の統計データのように、難民や国内避難民とは別で「国外に避難するベネズエラ人」というカテゴリーが作られています。

しかし今後、ベネズエラのように国内の経済が崩壊し国家が運営できない状態、いわゆるFailed State(破綻国家)の発生は別の国でも十分あり得ると見られています。

3位はアフガニスタンです。長くは1970年代のソ連の侵攻により難民となってしまった人々、そして近年の米軍の侵攻とタリバン政権の崩壊、そしてその後の国内の武装勢力との抗争と政情不安が現在も多くの国民に対して避難を強いています。

4位は南スーダンです。1950年代から長きに渡りスーダンと独立に向けた戦争が続き、2011年に独立が達成された後も内戦が勃発し多くの南スーダン人が周辺国に避難をしています。

2018年に和平協定が結ばれ、2020年には統一政府が樹立されたことで、現在は内戦からの復興が急がれています。

5位はミャンマーです。主にイスラム教少数派であるロヒンギャ族が迫害のために隣国のバングラデシュへと避難しています。しかし2021年1月のミャンマー軍部によるクーデターで民主政府が打倒されたことで、国内の少数民族や民主派と軍部の間で内戦が新たに勃発する様相を見せています。

難民の主要受入国5ヵ国

またこれら難民を受け入れている主要な国は以下の5ヵ国となります。

難民の受入をする国トップ5 ©筆者作成

この1位のトルコから4位のウガンダの全てが、難民が発生している隣の国であることが分かると思います。

トルコはシリアの隣国であり、コロンビアはベネズエラの隣国、パキスタンはアフガニスタンの隣国でウガンダは南スーダンの隣国にあたります。

先進国では昨年に続きドイツが約120万人で5位。先進国の中では唯一の主要な受入国となっています。

また忘れてはならないのは、全世界の難民の86%は発展途上国が受けれいているという事実です。よく日本も含めて先進国で難民受入の議論が社会・政治問題となることがありますが、圧倒的多数は途上国が受け入れているという事実を見つめる必要があります。

その他の注目すべきデータ

©筆者作成

その他、2020年は一年間で100万人の子どもたちが難民キャンプなどで生まれ、新たに難民登録をされました。世代を跨いだ支援の重要性も問われています。

また約340万人の避難民が故郷への帰還を選択しました。これは国内避難民が約320万人、国の外に避難をしている難民が約20万人となっています。

最後に、34,400人がUNHCRの「第三国定住プログラム」を通して主に先進国へ移住をしています。特に小さい子どもがいる脆弱性の高い家族などはこのプログラムを通して先進国への移住ができますが、2020年は3万人強という歴史的に見ても最低水準に終わりました。

UNHCRは全世界で約144万人がすぐにでも第三国定住の必要があると主張していますが、先進国による保護の枠組みは進んでいるとは言えません。

このレポートから何を読み取れるか

まず今年のGlobal Trends 2020から読み取れることは、新型コロナウイルスによるパンデミックがあったにも関わらず紛争や迫害は世界中で継続し、一昨年の人数(約7,950万人)から増加、統計を取り始めて以来の最悪を更新したということです。

新型コロナウイルスのパンデミックは、2021年にはさらにすでに避難をしている人々や避難ができていない紛争地の人々の生活を悪化させると見られています。

特に食糧問題は深刻で、絶対的貧困(一日あたり1.90米ドル相当以下のお金で生活をする人々の数)にある人々の数が2020年の一年間で1億1,900万人から1億2,400万人にまで増加すると予測をされており、貧困が人々にさらなる避難を強いることになるかもしれません。

さらに気候変動も今後は、人々から故郷を奪う主要な原因になると見られています。

すでに干ばつによりサブサハラ諸国では人々が農業が営むことができなくなり、都市部に移動したり隣国に移民として渡ったり、欧州への危険な旅に臨む人々もいます。中には生活の糧を得るために仕方なく過激派組織に参加し、地域の治安を悪化させている例も見られます。

今後は(実際はすでに現在進行形で起きていますが)世界中でこのように気候変動による強制移住が頻繁に起きると見られています。

最後に…

最後に、こういうレポートを読みながらいつも自分に言い聞かせている言葉があります。

「この数字で表される一人ひとりに人生があり、家族があり、失われた大切なものがある」

こういった全体を理解をするレポートは、その問題を、今回で言えば難民問題の全体像を理解するための便利なツールとはなります。数字は客観的に事実を把握するためにも間違いなく大切です。

ただこの数字で表される一人ひとりが自分と同じ血の通った人間なんだということはいつも自分に言い聞かせています。世界人口の1%が移住を強いられているという現実を見れば、もしかしたら自分自身も難民だったかもしれない、もしくは将来自分がこういう境遇になる可能性だってあります。

本当にUNHCRがスローガンと掲げる「#難民とともに」を実現するならば、難民を決して数字として見ない努力を続けていく必要があると思います。

ここまでお読みいただきありがとうございました!

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