『ある人質 生還までの398日』(映画評)★★★☆☆

日本に一時帰国をしていました3月、お気に入りのラジオで紹介されていた『ある人質』という映画を観てきました。

イラクというこの映画の舞台であるシリアの隣国であり、この映画でも出てくる過激派組織ISIS(イスラム国)のスリーパーセルが今も活発に活動している場所にいることから、観ておく必要があると感じました。

今回は『ある人質 生還までの398日』をご紹介します。

あらすじ

舞台はデンマーク。ケガにより夢を断たれた体操選手のダニエル・リュウは趣味であった写真を学ぼうとフォトジャーナリストのもとに弟子入りする。

2013年、自分の取材を行おうと決心しトルコを経由し紛争にあえぐシリアに入る。

しかしシリアに入りすぐ、地元の武装組織に誘拐をされる。ダニエルは過激派組織ISISに引き渡され、家族のもとには数百万ドルの身代金を要求する連絡が…

家族はデンマーク政府にかけあうが、政府は「テロリストと交渉をしない」という原則のもと支援を拒否。家族は自分たちで身代金を集めることを決意。

果たしてダニエルの運命は…

作品について

監督はデンマーク人で、代表作にスウェーデン映画『ミレニアム ドラゴン・タトゥーの女』などがあるニールス・アルデン・オプレヴ。主演はエスベン・スメド

この作品は実際にダニエル・リュウが経験した人質生活をベースに作られており、シリアでの人質生活と、彼の救出を試みるデンマークの家族の13ヵ月間が交互に描かれています

作品中、しばしばダニエルの一人称視点での映像もあり、彼の実際の人質としての視点を体験できる瞬間もあります。

また生還したダニエルとの対比として、最終的にISISにより処刑された米国人ジャーナリストのジェームズ・フォーリー氏も作品に出てきます。

紙一重で助かったダニエルと命を落としたフォーリー氏。彼らの友情とその後の運命の分かれ道には心を痛めます。

【ネタばれ注意!】映画評

『ある人質』は全体的にスムーズに進み、観ていて飽きることはありません。

人質の処刑や拷問などショッキングな描写も度々あり、ダニエルの差し迫った命の危険をよく表しています。またそれと同時進行でクラウドファンディングを進めるデンマークの家族の苦悩が描かれ、相乗的に緊迫感が増していき映画として観ていて面白いです。

また個人的には、ジャーナリストの人たちがどのような危険のもとで紛争地の現状を取材をし、平和を享受する先進国で暮らしている私たちに届けてくれているのか。その現実を私たちに突き付けてくれている作品だと思います。

しかし短いながらもシリアという国に仕事で関わってきた身として、私は映画を観終わった後に言葉にできないモヤモヤが残りました。

この気持ちを以下のツイートでも載せました。

個人的には、ダニエルが取材を試み、人質生活を送ったシリアという国の現状がほとんど描かれていないことにすごい違和感を覚えました。

シリアでの描写はダニエルの人質生活とISISの残虐性だけ。

それが私の隣に座っていたおじさんの「シリアって怖い国ですねー」という感想に繋がってしまっていると感じました。

シリアという国に関わり、シリア人の友人も多い身としてはこの描き方には疑問を抱かざるを得ませんでした。

もちろん、映画という限れられた時間の中で描けることには限りがあります。しかしシリアを取材し命を落としたジャーナリストたちが描きたかったのはこういうシリアという国だったのか、と私は感想を持ちました。

これらから、センセーショナリズムを優先する「白人先進国が描いた紛争地の映画」という枠を出られない作品であると私は評価をします。

今回は『ある人質 生還までの395日』をご紹介しました。ここまでお読みいただきありがとうございました。

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