【歴史的な判断】ドイツ最高裁が環境団体の訴えを認める

2021年4月28日、ドイツ最高裁が「2019年にドイツ政府が制定した環境保護法は2030年までの二酸化炭素削減目標のために不十分である」というFridays for Futureなどの環境保護団体の訴えを認める判断を下しました。

この判決では、最高裁が「政府は将来世代の基本的人権を侵害している」と判断したことなど、環境保護が若い世代の人権に関わることであるとドイツ司法が初めて認めた歴史的な判断となりました。

それを報じたThe Gurdianの記事をツイートしたところ、100以上のRT(2021年5月4日現在)をもらいました。

今回は、2019年に制定されたドイツの環境保護法の中身について、またそれに対して環境保護団体が起こした訴え、そして裁判所の判断とその意味について解説しようと思います。

2019年の環境保護法(Bundes-Klimaschutzgesetz)の中身とは?

2019年12月、ドイツ政府は「環境保護法(Bundes-Klimaschutzgesetz)」を制定しました。

これは、EUが定めた2030年までに1990年比で55%の温室効果ガス削減と、パリ協定で定められた産業革命以前を基準に気温を2.0℃以下にするという目標のために定めた、ドイツとしてのアクションプランとも言える法律でした。

具体的には、以下のようなことが制定されました。

  • 各工業セクターごとにCO2排出量削減目標を定める
  • 航空機のチケットを対象に増税
  • 電車などの環境に優しい公共交通機関のチケット値下げ
  • 今後3年間、家屋などでCO2削減を目的としたリフォームを実施する場合に減税する、など

環境保護団体が訴えを起こす

しかしこの法律に対して、ドイツの若い環境活動家たちが訴えを起こします。中にはドイツ北部の沿岸地帯で農業をして暮らし、気候変動の影響を真っ先に受ける人たちも含まれていました。

彼らは「ドイツ政府が制定した環境保護法では、2030年までのCO2排出削減目標、またパリ協定が目標としている2050年目標には到底及ばない」主張していました。

具体的には以下の問題点を挙げています。

  • ある工業セクターが削減目標を達成できなくても、他のセクターでその分をカバーできていれば目標達成とみなすという消極的な規定
  • 目標値を毎年モニタリングするための外部の専門家会議設立の必要性

彼らはドイツのFridays for FutureやGreenpeace、BUNDなどといった環境保護団体からも支援を受けながら、裁判を続けました。

裁判所の判断とその意味とは?

この訴えに対して、カールツルエにあるドイツ最高裁は、原告である環境保護団体を支持する判決を2021年4月29日に言い渡します。

これでドイツ政府は環境保護法を改正し、目標に近づくようさらなる努力を司法から命じられた形となりました。

環境保護法は2030年までの目標を定めているがパリ協定では2050年までを目標にしており、それを将来世代に引き延ばしてはいけない、ということが判決の根拠としてあげられました。

つまりは、「環境保護は基本的人権である。しかもそれは現在の人々に対してのみだけでなく、将来の世代に対しても適用される」とし、将来世代の基本的人権をも保障することを政治に求める歴史的な判決となったと言えます。

ドイツ政府はこれから、将来世代の基本的人権をも含めた法改正を2022年末までに行うことを義務付けられたことになります。今後の法改正の動きも見守りたいと思います。

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