イラクで、外国人がワクチンを接種できた悲しい理由

最後の投稿から、またまた1年以上ぶりの投稿になってしまいました。

先日、新型コロナウイルスのワクチンをここアルビルで接種してきました。

今日はイラクのここ最近の新型コロナ事情に加えて、実際に新型コロナワクチンを接種した体験談、そしてワクチンの足りていないイラクにおいて外国人の、しかも若く全くの健康体の私がなぜ優先接種ができたのかについて書きたいと思います。

イラクの新型コロナウイルス事情

イラクでは2020年2月に初めて新型コロナの感染者が見つかった後、しばらくは感染は抑えられた状況が続いていました。国境は閉じられ、都市は数日から一週間のロックダウンを繰り返し、感染数のコントロールができていました。

イラクの新型コロナ一日あたりの新規感染者の推移 Source: Dong E, Du H, Gardner L. An interactive web-based dashboard to track COVID-19 in real time. Lancet Inf Dis. 20(5):533-534. doi: 10.1016/S1473-3099(20)30120-1

しかしラマダン(イスラム教の断食月)が明けた2020年6月頃から急激に増え始め、現在(2021年4月)第二波の真っただ中にあるイラクは一日あたり8,000人を超える感染者が記録されるなど、厳しい状況が続いています。

イラクと新型コロナワクチン(4/16現在)

感染が急増する中、イラクはCOVAXファシリティの枠組の中から2021年3月25日に始めてワクチンの供給を受けました。

第一便ではアストラゼネカ製のワクチンが33万6,000個届けられ、医療従事者は優先して接種が開始されました。

アストラゼネカのワクチンについての情報は、こちらの厚生労働省のサイトをご参照ください。

これは、人口約4,000万人。医療従事者だけでも20万人を超すイラクには圧倒的に足りないと言わざるを得ません。国際NGOである「国境なき医師団」もこのイラクでワクチンの足りない状況に警鐘を鳴らしています。

日本人がイラクで新型コロナワクチンを接種できた理由

この状況の中、私は4月の初めに早々にこの第一便の中からワクチンを接種することができました。

ワクチンを受ける筆者 ©筆者友人撮影

それには医療従事者のワクチン忌避という悲しい事情が背景にありました。

私は医療系NGOのスタッフとしてアルビル市の病院内にある事務所に勤務しています。日々、脆弱性の高い患者さんやその家族と接してはいますが、医療従事者ではありません。

しかし、病院内に勤務するお医者さんや看護師さんたちが自分たちのために取ってあるワクチンを受けることを忌避したため、もったいないということで病院側から私たちNGOスタッフに対して接種のオファーがありました。

日頃からワクチンの必要性、すでに多くの先進国でもアストラゼネカ製ワクチンが接種されていること、そして接種による想定される副反応もきちんと説明していたので、現地スタッフたちはみな喜んでそのオファーを受けました。

正直、僕自身は迷いました。

日本に帰れば来年初めにはワクチン接種を受けることができます。しかしここイラクでは、現在もワクチンの数は足りず、いつ次のワクチンが届くかも分かりません。

自分が受けないことで、他の地元のイラクの人が受ける機会もあるのではないかとも考えました。

しかしスタッフたちとも話し、やはりイラク人でもワクチンを忌避している人が未だに多くワクチンが無駄になる可能性があること、そして何より私たちが日々関わる患者さんを守るためにもワクチンを受けることにしました。

ワクチンを接種すると頭が狂ってしまう吸血鬼になるEDになる、などSNSに溢れる迷信めいた理由でワクチン接種を拒否する人もイラクではいまだに多いそうです。

ワクチンに対する意識にも変化が?

少し希望の持てる話として、最後に先日ここアルビルで起きたニュースをご紹介します。

4月に入り、イラクには米国ファイザー製ワクチンと中国シノファーム製ワクチンが到着しました。

ここアルビルでもその内1,000個強が届いたのですが、その接種を求めて病院に人々が殺到するという事態が発生しました。

ここイラクのクルド自治区ではワクチン接種のためには事前にオンラインフォームを通して登録する必要があるのですが、それを無視して人々が来てしまったそうです。

ワクチン忌避が未だに根強いとは言え、その逆にワクチンを早く打ちたいという人もいる。そのニュースに少しだけイラクの新型コロナ撲滅に希望を持つことができました。

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