「忘れられた紛争」西サハラ問題とは?

「めずらしい『西サハラ問題』の解決を目指す会合が国連の仲裁で開かれたが、突破口は見えなかった」

2日前、6年ぶりに「西サハラ問題」に関連して対立しているモロッコと、西サハラの独立を目指すアラブ系武装組織ポリサリオ戦線の会合がジュネーブで開かれましたが、ブレイクスルーはなかったというニュースがありました。

このニュースに関連して、今日は「西サハラ問題」について解説しようと思います。

アフリカでも最も古い紛争の一つ「西サハラ問題」って何?

西サハラの基本情報

西サハラの位置
  • 人口 53万8,000人
  • 面積 266,000 ㎢ (日本の本州と四国を足した大きさ)
  • 最大都市 アイウン
  • 言語 アラビア語、ベルベル語、スペイン語、フランス語

「西サハラ問題」の歴史

「西サハラ」問題の発端は遠く、19世紀後半にまでさかのぼります。

当時、西欧列強により分割されていたアフリカ。西サハラは、モロッコの北端と南端(その他はフランス領に)と一緒に1884年にスペインが保護領と主張し、「スペイン領サハラ」として事実上の植民地支配が始まりました。

1956年にモロッコがフランスから独立すると、スペインも今も「飛地領」としてスペイン領に残るセウタメリリャを以外を放棄しました。

しかし西サハラを手放そうとしないスペイン。西サハラに住むサハラウィ=アラブ人は「ポリサリオ戦線」を組織。アルジェリアの支援のもと、スペインに対して反乱を起こします。

この時期、国内事情が不安定であったスペインは、1975年末に西サハラからの完全撤退を表明しました。しかし「マドリード協定」でモロッコに西サハラの北側2/3を、モーリタニアに南側1/3の譲渡を約束をしたことにポリサリオ戦線は激怒。自らはサハラ=アラブ民主共和国の建国を宣言し、両国に対してゲリラ戦を仕掛けるようになりました。

後に、ポリサリオとモーリタニアの間では停戦が成立し、モーリタニアは完全撤退をしました。しかしモロッコはその領土も占領し、現在は西部をモロッコが、東部をポリサリオが支配する状況となっています。

現在の西サハラ

1991年に両者が停戦に応じたことで、国連の平和維持活動が始まります。

さらにMINURSO(国連西サハラ住民投票監視団)が入ったことで、独立の是非を問う住民投票の準備も進めています。

現在も16万5,000人以上※が難民として国外に避難しており、多くがアルジェリア西部ティンドウフ県にある難民キャンプで1970年代から暮らしています。

「西サハラ問題」を巡る年表
  • 1884年 スペインの保護領に
  • 1970年 スペインの支配に対して住民が蜂起する(「ゼムラ蜂起」)
  • 1973年 スペインからの独立を目指す「ポリサリオ戦線」が組織される
  • 1975年 スペインが西サハラから完全撤退
  • 1978年 「アルジェ宣言」によりモーリタニアとポリサリオの停戦が成立
  • 1983年 アフリカ統一機構(現アフリカ連合)が西サハラにおける民族投票の実現を支持。モロッコは反発し脱退(2017に復帰)
  • 1991 国連の仲介でモロッコとポリサリオの停戦が成立。PKO(平和維持活動)とともに、MINURSO(国連西サハラ住民投票監視団)が住民投票の実現に向け展開中

なぜ「西サハラ問題」は解決しないのか

冷戦で西サハラの周辺諸国のほとんど(アルジェリア、リビア、マリ)が東側陣営に加わり、モロッコは唯一の西側陣営の国として重要な国になりました。

西側諸国は重要なパートナーを失わないためにモロッコとの協力関係を押し進め、今日に繋がっています。

さらに2015、16年に多くの移民/難民がヨーロッパに押し寄せた「難民危機」がありましたが、モロッコは彼らの越境を認めないことで移民/難民を「せき止める」役割も果たしています。この理由からもヨーロッパ諸国はモロッコに良い顔をしている必要があるのです。

逆にポリサリオ側にはアルジェリアがずっと支援を続けており、アフリカ連合もバックについていることから一定の勢力があります。

この一定の勢力均衡に加え、ポリサリオ側が独立を目指していることに対して、モロッコ側は自治権ならば認めようとしている。この立場の違いが「西サハラ問題」を一層複雑なものにしています。

最後に…

今日は「西サハラ問題」について解説をしました。

読んでいただき分かったと思いますが、対立の根本的な原因は植民地支配にあり、そして大国が自国の利権を守るために紛争を終わらせられない、ということが今日まで続いています。

シリアやイエメンの紛争がニュースにのぼることは多いですが、西サハラ難民は注目されることがなく、国連も深刻な資金不足に陥っています。

この機に「西サハラ問題」を知っていただき、支援に繋がることを願っています。

今日もお読みいただきありがとうございました!また次回!

UNHCR Global Trends 2017のデータより

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